FP8やFP4のネイティブサポートと vLLM をつかった "fp8" 量子化

FP8やFP4のネイティブサポートと vLLM をつかった "fp8" 量子化

こんにちは、(株)Qualiteg プロダクト開発部です

最新モデルがリリースされたとき、推論速度を速くするために、いろいろな手法で量子化したり、複数の推論エンジンを使い分けたりしながら、正解をさがしにいくことが多いのですが、今回はそんな中で以下のような事象が発生いたしました。

当社もありとあらゆるGPUを取り揃えているわけではないので、あー、そういうことかぁ、と思ったので、本ブログにいたしました。

発生したエラー

vLLM 0.5.1 であるLLMをロードしようとしたときに発生したときに、以下のようなエラーが発生しました

ValueError: The quantization method fp8 is not supported for the current GPU. Minimum capability: 89. Current capability: 86 

原因は FP8 に対応していないGPU世代

GPUは NVIDIA RTX-A6000 で、以下のように OpenAI 互換サーバーで "fp8" 量子化を指定して起動しようとすると発生します。

python3 -m vllm.entrypoints.openai.api_server --model cyberagent/calm3-22b-chat --max-num-seqs 12 --quantization fp8 --chat-template="~/jinja/calm3_22b_chat.jinja"

原因は、RTX A6000 が FP8 を ネイティブでサポートしていない ため、でした。

つまり、この vLLM の FP8 量子化オプションはハードウェアが FP8演算に対応していたときのみ機能します。

(ちなみに、対応していないときは fp8_merlin という逃げ道もありますが、話がややこしくなるので別稿にて扱いたいと思います)

つまり、今回使用した GPU A6000 の capability levelは 86 (capability一覧)なので、FP8 量子化には対応していなかった、というオチとなります。

FP8 演算精度にネイティブに対応しているGPUたち

FP8(8ビット浮動小数点演算)は Hopper から加わった演算精度ですので、以下のようなGPUから使用することが可能です。

FP4 演算精度にネイティブに対応すると

さらに Capability 100 の Blackwell からは FP4 のネイティブサポートがありますので、おそらく vLLM も ネイティブ FP4 をサポートしてくるのではないでしょうか。

そうなると、そうした最新GPUの場合AWQやGPTQといった従来の専用のハードウェアアクセラレーションを前提としない「古典的」量子化手法とはまた別の「ネイティブ」量子化がでてくるため、どのくらいの差なのか、非常に興味深いところですね!

Read more

LLM推論基盤プロビジョニング講座 第4回 推論エンジンの選定

LLM推論基盤プロビジョニング講座 第4回 推論エンジンの選定

こんにちは!前回までの講座では、LLMサービス構築に必要なリクエスト数の見積もりや、使用モデルの推論時消費メモリ計算について詳しく解説してきました。今回は7ステッププロセスの4番目、「推論エンジンの選定」について詳しく掘り下げていきます。 推論エンジンとは何か 推論エンジンとは、GPU上でLLMモデルの推論計算(テキスト生成)を効率的に行うために設計された専用のソフトウェアプログラムです。一般的なディープラーニングフレームワーク(PyTorch、TensorFlowなど)でも推論は可能ですが、実運用環境では専用の推論エンジンを使用することで、大幅なパフォーマンス向上とリソース効率化が期待できます。 推論エンジンは単なる実行環境ではなく、様々な最適化技術を実装しています。特定のモデルアーキテクチャに特化した最適化機能を実装したものや、推論速度の高速化に特化したもの、前回解説したKVキャッシュのメモリ効率化機能を備えたものなど、それぞれ特徴が異なります。そのため、自社で採用したLLMモデルや運用環境、要件に合致した推論エンジンを選定することが重要です。 推論エンジン選定のアプロ

By Qualiteg コンサルティング
発話音声からリアルなリップシンクを生成する技術 第1回:音素とwav2vec

発話音声からリアルなリップシンクを生成する技術 第1回:音素とwav2vec

こんにちは! 今日は当社のMotionVox でも実際に使っている「リップシンク」技術について総合的に解説してみたいとおもいます。 音声に合わせて自然な口の動きを生成するリップシンク技術は、AIアバターや3Dアニメーション制作においても重要な技術です。 本記事では、最新のディープラーニング技術を活用したリップシンク学習の基礎から実装まで、技術的な観点から詳しく解説します。 1. リップシンク学習の基礎概念 1.1 問題設定 リップシンク学習とは、音声データから対応する口の動きを予測する回帰問題ととらえることができます f: 音声特徴量(t) → 口の動きパラメータ(t) この問題のコアは 音韻(音の特徴)と視素(視覚的な口の形)の対応関係を学習する ことにあります。 1.2 音韻-視素マッピングの複雑性 ただし! 人間の発話における音と口の形の関係は、単純な1対1マッピングではないんです。 同じ音でも文脈で変化 「あ」の発音でも: - 「か」の後の「あ」→ 口がやや狭めから開く - 「ん」の後の「あ」→ 口が閉じた状態から大きく開く 調音結合

By Qualiteg 研究部, Qualiteg コンサルティング
LLM推論基盤プロビジョニング講座 第3回 使用モデルの推論時消費メモリ見積もり

LLM推論基盤プロビジョニング講座 第3回 使用モデルの推論時消費メモリ見積もり

こんにちは!前回はLLMサービスへのリクエスト数見積もりについて解説しました。今回は7ステッププロセスの3番目、「使用モデルの推論時消費メモリ見積もり」について詳しく掘り下げていきます。 GPUメモリがリクエスト処理能力を決定する LLMサービス構築において、GPUが同時に処理できるリクエスト数はGPUメモリの消費量によって制約されます。 つまり、利用可能なGPUメモリがどれだけあるかによって、同時に何件のリクエストを処理できるかがほぼ決まります。 では、その具体例として、Llama3 8B(80億パラメータ)モデルをNVIDIA RTX A5000(24GB)にロードするケースを考えてみましょう。 このGPUには24GBのGPUメモリがありますが、すべてをリクエスト処理に使えるわけではありません。最初にモデル自体が一定量のメモリを消費し、残りの領域で実際のリクエスト処理を行います。 GPUメモリ消費の二大要素 GPUの消費メモリ量は主に以下の2つの要素によって決まります 1. モデルのフットプリント LLMをGPUに読み込んだときに最初に消費されるメモリ

By Qualiteg コンサルティング
システムとcondaのC++標準ライブラリ(libstdc++)のバージョン違い問題による事象と対処法解説

システムとcondaのC++標準ライブラリ(libstdc++)のバージョン違い問題による事象と対処法解説

こんにちは! 先日、dlibをつかったPythonアプリケーション(conda環境で動作する)作っていたところ、以下のようなエラーに遭遇しました。 ImportError: /home/mlu/anaconda3/envs/example_env/bin/../lib/libstdc++.so.6: version `GLIBCXX_3.4.32' not found (required by /home/mlu/anaconda3/envs/example_env/lib/python3.10/site-packages/_dlib_pybind11.cpython-310-x86_64-linux-gnu.so) 「dlib_pybind11モジュールがGLIBCXX_3.4.32を要求してるけど、みつからない!」という感じのエラーですね。

By Qualiteg プロダクト開発部