Gemini 2.5 Pro/Flashにおけるマルチモーダルトークン(画像のトークン数、動画のトークン数など)計算ガイド

Gemini 2.5 Pro/Flashにおけるマルチモーダルトークン(画像のトークン数、動画のトークン数など)計算ガイド
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こんにちは!

本日は、Gemini 2.5 ProおよびGemini 2.5 Flashを使用する際、料金計算やコンテキストウィンドウの管理において、トークン数の正確な把握は非常に重要です。本記事では、画像、動画、音声といったマルチモーダルコンテンツのトークン計算方法について詳しく解説します。

基本概念:トークンとは

Gemini 2.5シリーズにおいて、1トークンは約4文字に相当し、100トークンは約60-80語(英語)に相当します。すべての入力と出力はトークン単位で処理され、課金もトークン数に基づいて行われます。

Gemini 2.5シリーズのモデルと料金

利用可能なモデル

  • Gemini 2.5 Pro: 高度な推論能力を持つフラグシップモデル
  • Gemini 2.5 Flash: コスト効率に優れた高速モデル
  • Gemini 2.5 Flash Image: 画像生成専用モデル

コンテキストウィンドウ

両モデルとも1,000,000トークンの大規模なコンテキストウィンドウを提供します。

料金体系(プレビュー段階)

モデル 入力料金 出力料金
Gemini 2.5 Pro $4/100万トークン $20/100万トークン
Gemini 2.5 Flash $0.30/100万トークン $2.50/100万トークン
Gemini 2.5 Flash Image - 1画像あたり1290トークン(約$0.039)

画像のトークン計算

動的タイリングシステム

Gemini 2.5シリーズでは、画像サイズに応じた動的なタイリングシステムを採用しています。

小さい画像(384ピクセル以下)

  • 両方の寸法が384ピクセル以下の画像:258トークン固定

大きい画像(384ピクセル超)

  • 768×768ピクセルのタイルに分割
  • 各タイル:258トークン
  • 総トークン数 = タイル数 × 258

実装例

from google import genai

client = genai.Client()
prompt = "この画像について説明してください"

# 画像ファイルをアップロード
image_file = client.files.upload(file="sample_image.jpg")

# トークン数をカウント
token_count = client.models.count_tokens(
    model="gemini-2.5-flash",
    contents=[prompt, image_file]
)
print(f"総トークン数: {token_count}")
# 例: 小さい画像の場合 → total_tokens: 263(テキスト5 + 画像258)

タイル数の計算方法

def calculate_image_tokens(width, height):
    if width <= 384 and height <= 384:
        return 258
    else:
        tiles_width = (width + 767) // 768
        tiles_height = (height + 767) // 768
        return tiles_width * tiles_height * 258

重要なポイント

  • File APIでアップロードした画像とインラインデータとして提供した画像で、トークン数は同じ
  • 画像の解像度に応じてトークン数が変動するため、事前の確認が重要

動画のトークン計算

固定レート方式

動画は時間ベースの固定レートでトークン化されます。

レート:1秒あたり263トークン

計算例

import time
from google import genai

client = genai.Client()
prompt = "この動画の内容を要約してください"

# 動画ファイルをアップロード
video_file = client.files.upload(file="sample_video.mp4")

# 動画処理の完了を待つ
while video_file.state.name != "ACTIVE":
    print("動画を処理中...")
    time.sleep(5)
    video_file = client.files.get(name=video_file.name)

# トークン数をカウント
token_count = client.models.count_tokens(
    model="gemini-2.5-flash",
    contents=[prompt, video_file]
)
print(f"総トークン数: {token_count}")

動画長とトークン数の関係

動画の長さ トークン数
1秒 263
10秒 2,630
1分 15,780
5分 78,900

音声のトークン計算

固定レート方式

音声も時間ベースの固定レートでトークン化されます。

レート:1秒あたり32トークン

音声長とトークン数の関係

音声の長さ トークン数
1秒 32
10秒 320
1分 1,920
5分 9,600

実践的な使用例:使用メタデータの活用

generate_contentを呼び出した後、usage_metadataから詳細なトークン情報を取得できます。

response = client.models.generate_content(
    model="gemini-2.5-flash",
    contents=[prompt, media_file]
)

# 詳細なトークン情報を取得
metadata = response.usage_metadata
print(f"入力トークン: {metadata.prompt_token_count}")
print(f"出力トークン: {metadata.candidates_token_count}")
print(f"総トークン数: {metadata.total_token_count}")

# キャッシュトークンの取得(利用可能な場合)
if hasattr(metadata, 'cached_content_token_count'):
    print(f"キャッシュトークン: {metadata.cached_content_token_count}")

# 思考トークンの取得(思考モデルを使用している場合のみ)
if hasattr(metadata, 'thoughts_token_count'):
    print(f"思考トークン: {metadata.thoughts_token_count}")

コスト最適化のベストプラクティス

1. 事前のトークン数確認

# generate_contentを呼ぶ前にトークン数を確認
estimated_tokens = client.models.count_tokens(
    model="gemini-2.5-flash",
    contents=contents
)
if estimated_tokens > threshold:
    # コンテンツを調整または警告を表示
    pass

2. 画像の最適化

  • 不必要に大きい画像は避ける(タイル数が増えるため)
  • 384ピクセル以下の画像は258トークン固定なので、小さいサムネイルで十分な場合は活用

3. 動画・音声の長さ管理

  • 動画:必要な部分のみを切り出して使用
  • 音声:動画より効率的(同じ1秒で32トークン vs 263トークン)

4. コンテキストキャッシング

Gemini 2.5シリーズでは、コンテキストキャッシングを活用することでトークン使用量を削減できます。キャッシュされたトークンは通常の半額で課金されます。

5. モデルの使い分け

  • 複雑なタスク:Gemini 2.5 Pro
  • 高速処理が必要な場合:Gemini 2.5 Flash
  • コスト重視:Gemini 2.5 Flash(Proの約1/7の入力コスト)

まとめ

Gemini 2.5 Pro/Flashのマルチモーダルトークン計算は以下のルールに従います。

  • 画像: 384px以下は258トークン、それ以上はタイル数×258トークン
  • 動画: 1秒あたり263トークン
  • 音声: 1秒あたり32トークン
  • コンテキストウィンドウ: 両モデルとも100万トークン

これらの計算方法を理解することで、APIの使用コストを予測し、コンテキストウィンドウを効率的に管理できます。特に大規模なマルチモーダルアプリケーションを開発する際は、事前のトークン数確認とコンテンツの最適化が重要です。

参考リンク

より詳細な情報については、Gemini API公式ドキュメントをご参照ください。

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