[AI新規事業創出] Qualitegセレクション:アイディア創造編④オズボーンのチェックリストの活用術

[AI新規事業創出] Qualitegセレクション:アイディア創造編④オズボーンのチェックリストの活用術

Qualiteg blogを訪問してくださった皆様、こんにちは。Micheleです。AIを活用した新規事業やマーケティングを手がけている私には、クライアントからよく寄せられる質問があります。AIを用いた事業展開を検討されている方々が共通して直面するであろう課題に対して、このブログを通じて私なりの解答をご提供したいと思います。


新規事業のアイディア創出を加速させる - オズボーンのチェックリスト活用術とは

新規事業の立ち上げは、企業の成長と競争力維持の要となります。しかし、革新的なアイディアを生み出すのは容易ではありません。そこで注目したいのが「オズボーンのチェックリスト」です。この強力なツールを使いこなすことで、新規事業のアイディア創出を劇的に加速させることができます。

本記事では、オズボーンのチェックリストの基本から実践的な活用法、さらには新規事業創出への応用まで、詳しく解説していきます。

オズボーンのチェックリストとは

オズボーンのチェックリストは、広告業界の先駆者アレックス・F・オズボーンが1953年に考案した創造的思考法です。既存の概念や製品を様々な角度から見直し、新しいアイディアを生み出すための9つの質問(または視点)から構成されています。

a notepad with a pen on top of it

オズボーンのチェックリストの9つの視点

(1) 他に使い道はないか?(Put to Other Uses)
(2) 応用できないか?(Adapt)
(3) 変更できないか?(Modify)
(4) 拡大できないか?(Magnify)
(5) 縮小できないか?(Minify)
(6) 代用できないか?(Substitute)
(7) 再配列できないか?(Rearrange)
(8) 逆にできないか?(Reverse)
(9) 結合できないか?(Combine)

「自社だけでは変革が難しい」「外部との協業の進め方がわからない」「革新的なアイデアが社内で埋もれている」—企業が抱えるこうした課題に、株式会社Qualitegの Innovation-Crossは具体的な解決策を提供します。

企業の現状を徹底分析し、外部との協業による革新創出の戦略を策定。明確なロードマップとKPIで実行を支援します。アイデアワークショップ、ハッカソン企画、AI技術活用など、多様なアプローチで社内外の知恵を融合させ、真のイノベーションを実現。経験豊富な専門コンサルタントが伴走し、革新への障壁を一つひとつ取り除き、新たな価値創造への道を切り拓きます。

各視点の詳細解説と活用例

(1) 他に使い道はないか?(Put to Other Uses)
既存の製品やサービスを、想定外の用途や市場で活用する方法を探ります。

例:スマートフォンを車載コンピューターとして使用する。

(2) 応用できないか?(Adapt)
他の分野や業界のアイディアを自社の製品やサービスに適用します。

例:自動車産業の生産ラインシステムを飲食業に応用し、効率的な調理プロセスを構築する。

(3) 変更できないか?(Modify)
既存の要素を変更し、新たな価値を生み出します。

例:従来の定額制サブスクリプションを、利用量に応じた変動制に変更する。

(4) 拡大できないか?(Magnify)
製品やサービスの一部を拡大・強化し、新たな魅力を創出します。

例:スマートウォッチのディスプレイサイズを大幅に拡大し、新たな使用体験を提供する。

(5) 縮小できないか?(Minify)
製品やサービスを小型化・簡素化し、新たな需要を掘り起こします。

例:大型の家電製品をコンパクト化し、小さな住居向けの製品ラインを開発する。

(6) 代用できないか?(Substitute)
既存の要素を別のものに置き換え、新たな価値を生み出します。

例:プラスチック製の部品を生分解性素材に置き換え、環境に配慮した製品を開発する。

(7) 再配列できないか?(Rearrange)
既存の要素の順序や配置を変更し、新たな機能や魅力を創出します。

例:従来のオフィスレイアウトを再設計し、コラボレーションを促進する空間を創出する。

(8) 逆にできないか?(Reverse)
既存の概念や方法を逆転させ、新たな視点を得ます。

例:消費者が製品を購入するのではなく、企業が消費者から使用済み製品を買い取るビジネスモデルを構築する。

(9) 結合できないか?(Combine)
異なる要素や概念を組み合わせ、新たな価値を創造します。

例:フィットネストラッカーと決済機能を組み合わせ、運動量に応じて保険料が変動するヘルスケア保険サービスを開発する。

新規事業創出におけるオズボーンのチェックリストの活用法

(1) ブレインストーミングとの組み合わせ
チームでブレインストーミングを行う際に、オズボーンのチェックリストを活用することで、より多様で革新的なアイディアを生み出すことができます。各視点をステップとして、順番に検討していくことで、包括的なアイディア出しが可能になります。

(2) 既存事業の見直し
自社の既存事業や製品をオズボーンのチェックリストに照らし合わせて見直すことで、新たな事業機会や製品改良のヒントを得ることができます。

(3) 市場分析との連携
市場トレンドや顧客ニーズの分析結果を、オズボーンのチェックリストの各視点と照らし合わせることで、より実現可能性の高い新規事業アイディアを創出できます。

(4) イノベーションワークショップの実施
定期的にオズボーンのチェックリストを活用したイノベーションワークショップを開催することで、組織全体の創造的思考力を高めることができます。

(5) クロスファンクショナルチームの活用
異なる部門や専門分野のメンバーでチームを構成し、オズボーンのチェックリストを用いたディスカッションを行うことで、多角的な視点からのアイディア創出が可能になります。

オズボーンのチェックリストを効果的に活用するためのポイント

(1) 判断の一時停止
アイディア出しの段階では、実現可能性や採算性の判断を一時停止し、自由な発想を促進します。

(2) 量を重視
質よりも量を重視し、できるだけ多くのアイディアを出すことを心がけます。

(3) 異質な組み合わせを奨励
一見関係のない要素の組み合わせこそ、革新的なアイディアの源泉となることを理解し、奨励します。

(4) 視覚化ツールの活用
マインドマップやアイディアボードなどの視覚化ツールを活用し、アイディアの関連性や発展性を把握しやすくします。

(5) 定期的な振り返り
生み出されたアイディアを定期的に振り返り、さらなる改善や組み合わせの可能性を探ります。

新規事業アイディアの評価と選定プロセス

オズボーンのチェックリストを用いて多数のアイディアが生成された後は、それらを適切に評価し、実現可能性の高いものを選定する必要があります。

(1) 初期スクリーニング

  • 市場性:潜在的な市場規模と成長性
  • 技術的実現可能性:必要な技術の有無や開発可能性
  • 事業との適合性:自社の強みや戦略との整合性

(2) 詳細評価

  • 財務的視点:予想される収益性、初期投資額、回収期間
  • リスク分析:市場リスク、技術リスク、規制リスクなど
  • 競争優位性:競合他社との差別化要因

(3) プロトタイピングとテスト
選定されたアイディアについて、簡易的なプロトタイプを作成し、潜在顧客からのフィードバックを収集します。

(4) ビジネスモデルの構築
有望なアイディアについて、詳細なビジネスモデルを構築し、収益構造や必要リソースを明確化します。

(5) 最終選定
経営陣を交えた最終選定会議を開催し、新規事業として推進するアイディアを決定します。

white printer paper beside white ceramic mug

新規事業立ち上げまでのロードマップ

オズボーンのチェックリストを用いて創出されたアイディアを実際の新規事業として立ち上げるまでのロードマップはこちらになります。

(1) コンセプト検証フェーズ

  • 市場調査の実施
  • 顧客ニーズの深掘り
  • 競合分析
  • 概念実証(Proof of Concept)の作成

(2) ビジネスプラン策定フェーズ

  • 詳細な市場分析
  • 収益モデルの構築
  • 必要リソースの洗い出し
  • 財務計画の策定
  • リスク管理計画の立案

(3) 開発フェーズ

  • プロダクト/サービスの詳細設計
  • プロトタイプの開発
  • ユーザーテストの実施
  • フィードバックに基づく改善

(4) 試験展開フェーズ

  • 限定的な市場での試験展開
  • 顧客反応の分析
  • 運用プロセスの最適化
  • 収益性の検証

(5) 本格展開フェーズ

  • 全市場への展開
  • マーケティング戦略の本格実施
  • 販売/サービス提供体制の拡充
  • 継続的な改善とイノベーション

オズボーンのチェックリストを活用した新規事業創出の成功事例

(1) 3M社のポストイット
「他に使い道はないか?」の視点から生まれた成功例。粘着力の弱い接着剤を、紙に付けて剥がせるメモ用品として活用。

(2) アマゾンのAWS(Amazon Web Services)
「他に使い道はないか?」と「拡大できないか?」の視点から、自社の IT インフラを外部向けクラウドサービスとして展開。

(3) ナイキのNike+
「結合できないか?」の視点から、スポーツウェアと技術を融合し、運動データを記録・分析するサービスを創出。

まとめ

オズボーンのチェックリストは、新規事業のアイディア創出において非常に強力なツールです。9つの視点を通じて既存の概念や製品を多角的に見直すことで、革新的なアイディアが生まれる可能性が大きく広がります。

しかし、ツールの活用だけでなく、それを組織文化に根付かせ、継続的にイノベーションを生み出す仕組みを構築することが重要です。また、生み出されたアイディアを適切に評価し、実現可能性の高いものを選定・育成していくプロセスも欠かせません。

オズボーンのチェックリストを起点とし、市場分析、プロトタイピング、ビジネスモデル構築など、各段階を着実に進めていくことで、成功する新規事業の確立が期待できます。組織全体でこのプロセスを理解し、継続的に実践していくことが、持続的なイノベーションと企業成長につながるでしょう。

新規事業の創出は、不確実性と向き合い、失敗を恐れずチャレンジし続ける姿勢が求められます。オズボーンのチェックリストを活用し、創造的思考を組織に根付かせることで、常に新たな価値を生み出し続ける革新的な企業文化を築くことができるのです。


コラムを最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。私たちQualitegは、AI技術や新規事業の企画方法に関する研修およびコンサルティングを提供しております。もしご興味をお持ちいただけた場合、また具体的なご要望がございましたら、どうぞお気軽にこちらのお問い合わせフォームまでご連絡くださいませ。

また、新規事業創出のステップを体得したいという方にご好評のワークショップも実施しております。それぞれの担当者の方が役員目線で事業を考えるという点にフォーカスしたトレーニング内容となっており、企画担当者の方だけではなく、カウンターパートのエンジニア、デザイナー、マーケターの方にもご受講いただけるコンテンツとなっております。

皆様からのお問い合わせを心よりお待ちしております。次回のコラムも、ぜひご期待くださいね。


navigation

Read more

AIがよく間違える「クロージャ問題」の本質と対策

AIがよく間違える「クロージャ問題」の本質と対策

こんにちは! 本日は「クロージャ問題」に関する話題となります。 Pythonでループ内に関数を定義したことはありますか? もしあるなら、あれれ?な挙動に遭遇したことがあるかもしれません。 本稿では、Pythonプログラマーなら一度は経験する「クロージャ問題」について、初心者にもわかりやすく解説してみたいとおもいます クロージャとは何か? そもそも ”クロージャ” とは何でしょうか。 クロージャ(closure)とは、関数が自分の定義されたスコープの変数を覚えて持ち運ぶ仕組み のことです。 もう少し分解すると、次の2つがポイントとなります 1. 内側の関数が、外側の関数の変数を使える 2. 外側の関数が終了しても、その変数は生き続ける 普通の関数とクロージャ―を使った関数を比較してみましょう 普通の関数との比較 まずは普通の関数から、 def add(x, y): return x + y print(add(3, 5)) # 8 print(add(3, 7)

By Qualiteg プロダクト開発部
フリーランスHub様にQualiteg Blogをご紹介いただきました

フリーランスHub様にQualiteg Blogをご紹介いただきました

この度、フリーランス向け案件検索サービス「フリーランスHub」様の特集記事「トレンドをキャッチアップ!AIに関する情報が得られるメディア・ブログまとめ」にて、弊社が運営する「Qualiteg Blog」をご紹介いただきました。 掲載記事について フリーランスHub様の記事では、AI技術の最前線で活躍するエンジニアや開発者の方々に向けて、価値ある情報源となるメディア・ブログが厳選して紹介されています。 その中で、Qualiteg Blogを「AI技術の専門知識を実践的なビジネス活用につなげる貴重な情報源」として取り上げていただきました。 特に以下の点を評価いただいております * 実践的なビジネス活用事例の提供 AI新規事業創出や事業選定方法など、経営者やビジネスリーダーが直面する課題への具体的な解決策 * 技術的な深掘りコンテンツ リップシンク技術など、実際のサービスで使用されている技術の開発現場目線での詳細な解説 * 多様な情報発信 代表執筆記事、AIトピックス、講演会動画など、幅広いフォーマットでの情報提供 今後も価値ある情報発

By Qualiteg ニュース
PyTorchの重いCUDA処理を非同期化したらメモリリークした話と、その解決策

PyTorchの重いCUDA処理を非同期化したらメモリリークした話と、その解決策

こんにちは!Qualitegプロダクト開発部です! 今回は同期メソッドを非同期メソッド(async)化しただけなのに、思わぬメモリリーク※に見舞われたお話です。 深層学習モデルを使った動画処理システムを開発していた時のことです。 「処理の進捗をリアルタイムでWebSocketで通知したい」という要件があり、「単にasync/awaitを使えばいいだけでしょ?」と軽く考えていたら、思わぬ落とし穴にはまりました。 プロ仕様のGPUを使っていたにも関わらず、メモリ不足でクラッシュしてしまいました。 この記事では、その原因と解決策、そして学んだ教訓を詳しく共有したいと思います。同じような問題に直面している方の参考になれば幸いです。 ※ 厳密には「メモリリーク」ではなく「メモリの解放遅延」ですが、 実用上の影響は同じなので、この記事では便宜上「メモリリーク」と表現します。 背景:なぜ進捗通知は非同期である必要があるのか モダンなWebアプリケーションの要求 最近のWebアプリケーション開発では、ユーザー体験を向上させるため、長時間かかる処理の進捗をリアルタイムで表示することが

By Qualiteg プロダクト開発部
ゼロトラスト時代のLLMセキュリティ完全ガイド:ガーディアンエージェントへの進化を見据えて

ゼロトラスト時代のLLMセキュリティ完全ガイド:ガーディアンエージェントへの進化を見据えて

こんにちは! 今日はセキュリティの新たな考え方「ゼロトラスト」とLLMを中心としたAIセキュリティについて解説いたします! はじめに 3つのパラダイムシフトが同時に起きている いま、企業のIT環境では3つの大きな変革が起ころうとしています。 1つ目は「境界防御からゼロトラストへ」というセキュリティモデルの転換。 2つ目は「LLMの爆発的普及」による新たなリスクの出現。 そして3つ目は「AIエージェント時代の到来」とそれに伴う「ガーディアンエージェント」という新概念の登場です。 これらは別々の出来事のように見えて、実は密接に関連しています。本記事では、この3つの変革がどのように結びつき、企業がどのような対策を取るべきかを解説いたします 目次 1. はじめに:3つのパラダイムシフトが同時に起きている 2. 第1の変革:ゼロトラストという新しいセキュリティ思想 3. 第2の変革:LLM時代の到来とその影響 4. 第3の変革:AIエージェントとガーディアンエージェント 5. 3つの変革を統合する:実践的なアプローチ 6. 実装のベストプラクティス 7. 日本

By Qualiteg コンサルティング