推論時torch.tensor(sourceTensor)ではなくて、sourceTensor.clone().detach()を使おう

推論時torch.tensor(sourceTensor)ではなくて、sourceTensor.clone().detach()を使おう
Photo by Ashkan Forouzani / Unsplash

PyTorchのテンソル操作最適化: 警告メッセージの理解と解決

こんにちは!

Qualiteg プロダクト開発部です。

PyTorch 1.13にて、次のような警告メッセージに遭遇しました

UserWarning: To copy construct from a tensor, it is recommended to use sourceTensor.clone().detach() or sourceTensor.clone().detach().requires_grad_(True), rather than torch.tensor(sourceTensor).

この記事では、この警告の意味を解説し、修正方針についてかきたいとおもいます。

torch.tensor() よりも .clone().detach() のほうがおすすめなのか

それは、PyTorchがテンソルと自動微分(オートグラッド)をどのように扱うかに関係があります。

torch.tensor() をつかうと「勾配計算=自動微分どうするねん」っていう意思表示がハッキリしないんです。

一方clone().detach()は「勾配配計算しないよ」をあらわし、clone().detach().requires_grad_(True)は「勾配計算有効」をあらわすので、コードから意図がよみとれる&明示的に指定できる、のがポイントです。

clone().detach()では、元のテンソルとメモリを共有せず、計算グラフから切り離された新しいテンソルが作成されます。これにより、特に勾配や誤差逆伝播を扱う際に、予期せぬ動作を防ぐことができるというわけです。

推論で使うときはどう書けばいい?

結論からいうと、推論時には sourceTensor.clone().detach() をつかいましょう。

その理由は以下のとおりです

  1. 計算効率:
    推論時には通常、勾配計算は不要です。detach() を使うことで、テンソルを計算グラフから切り離し、不要な勾配計算を防ぎます。これにより、メモリ使用量が減少し、計算速度が向上します。
  2. メモリ管理
    clone() は新しいメモリ領域にデータをコピーします。これにより、元のテンソルに影響を与えることなく、安全に操作を行えます。
  3. 意図しない変更の防止
    detach() を使用することで、誤って勾配計算を行ってしまうリスクを減らせます。これは特に大規模なモデルや複雑なアーキテクチャで重要です。
  4. モデルの固定
    推論時には当然モデルのパラメータを更新したくないのでdetach() を使うことで、誤ってモデルが更新されることを防げます。

チェインしてるメソッドの詳細説明

  1. clone() メソッド:
    • 新しいテンソルを作成し、元のテンソルのデータをコピーします。
    • これにより、元のデータに影響を与えることなく安全に操作できます。
  2. detach() メソッド:
    • テンソルを現在の計算グラフから切り離します。
    • 勾配計算が不要な場合(例:推論時)に特に有用です。

まとめ

  • sourceTensor.tensor() でコピーするのはコンテクストがあいまいなので使わないようにしましょう。
  • 推論時は clone().detach() を使用します。勾配計算が不要なため、メモリ使用量を減らし、計算速度を向上させます。
  • 学習時は 勾配計算が必要な場合は、clone().detach().requires_grad_(True) を使用します。これにより、新しいテンソルで勾配計算が可能になります。

Read more

Node.jsで大容量ファイルを扱う:AIモデルのような大きなデータ保存はストリーム処理使いましょう

Node.jsで大容量ファイルを扱う:AIモデルのような大きなデータ保存はストリーム処理使いましょう

こんにちは!今日はAIシステムのフロントサーバーとしてもよく使用するNode.jsについてのお話です。 AIモデルの普及に伴い、大容量のデータファイルを扱う機会が急増しています。LLMなどのモデルファイルやトレーニングデータセットは数GB、場合によっては数十、数百GBにも達することがあります。 一方、Node.jsはWebアプリケーションのフロントサーバーとして広く採用されており、データマネジメントやPythonで書かれたAIバックエンドとの橋渡し役としてもかなりお役立ちな存在です。 本記事では、Node.js v20LTSで5GB程度のファイルを処理しようとして遭遇した問題と、その解決方法について解説します。 Node.jsのバッファサイズ制限の変遷 Node.jsのバッファサイズ制限は、バージョンによって大きく変化してきました Node.jsバージョン サポート終了日 バッファサイズ上限 備考 Node.js 0.12.x 2016年12月31日 ~1GB 初期のバッファサイズ制限(smalloc.kMaxLength使用) Node.js 4.

By Qualiteg プロダクト開発部
AGI時代に向けたプログラマーの未来:役割変化とキャリア戦略

AGI時代に向けたプログラマーの未来:役割変化とキャリア戦略

はじめに 私がはじめてコードを書いたのは1989年です。 当時NECのPC88というパソコンを中古でかってもらい N-88 Basic というBASIC言語のコードをみようみまねで書いて動かしたあの日から何年経つのでしょうか。 当時、電波新聞社のマイコンBASICマガジンという雑誌があり、ベーマガにはいろんなパソコン向けのプログラムコードが掲載されていました。 そんなわけでもう35年以上趣味や仕事でプログラミングに従事していますが、開発環境、情報流通の仕組みには革命といっていいほどの変化、進化がおこりました。 しかしながら、そんな中でも、あくまでコードを書くのは「私」という生身の人間でした。 そうしたある種の古き良き時代は、いよいよ本格的に終わりを告げようとしています。 2023年ごろからのLLM技術の飛躍的進歩により、プログラミング業界は大きな転換期を迎えています。 特に、OpenAI o3,o1やClaude 3.5、Gemini2.0などの大規模言語モデル(LLM)の進化や、その先にある将来的な汎用人工知能(AGI)の出現は、プログラマーやAIエンジニアの役割に根

By Tomonori Misawa / CEO
PythonとWSL開発のトラブルシューティング: PyCharmとCondaの環境不一致問題

PythonとWSL開発のトラブルシューティング: PyCharmとCondaの環境不一致問題

こんにちは! 今回は、WSL上のConda環境をPyCharmから利用する際に発生した「同じ環境なのにパッケージリストが一致しない」という問題に遭遇したため、その原因と対策について書いてみたいとおもいます 問題の状況 開発の流れは以下のようなものでした 1. WSL環境でConda仮想環境を作成 2. その環境をPyCharmのプロジェクトインタプリタとして設定 3. 開発を進める中で奇妙な現象に気づく 具体的には、次のような不一致が発生していました * PyCharmのプロジェクト設定で表示されるpipパッケージのリスト * WSLでConda環境をアクティベートした後にpip listコマンドで表示されるパッケージのリスト これらが一致せず、「WSL側のシェルから直接インストールしたパッケージがPyCharmで認識されない」という問題が生じていました。 この手の問題でよくある原因は、PyCharm側がWSL側の更新を得るのに少し時間がかかったり、 Indexing が遅れているなどなのですが、今回はそれが原因ではありませんでした。 危険な「静かな

By Qualiteg プロダクト開発部
人気ゲーム「ヒット&ブロー」で学ぶ情報理論

人気ゲーム「ヒット&ブロー」で学ぶ情報理論

こんにちは! Qualiteg研究部です! 今日はAIにおいても非常に重要な情報理論について、Nintendo Switchの人気ゲーム「世界のアソビ大全51」にも収録されている「ヒット&ブロー」というゲームを題材に解説いたします! はじめに 論理的思考力を鍛える定番パズルゲームとして長年親しまれている「ヒット&ブロー」(海外では「Mastermind」として知られています)。 このゲームは一見シンプルながらも、その攻略には深い論理的アプローチが必要とされております。 本稿では、このゲームについて情報理論という数学的概念を用いてゲームの素性を分析する方法について掘り下げてみたいとおもいます。 さらに、この情報理論が現代の人工知能(AI)技術においてどのように活用されているかについても触れていきます。 ヒット&ブローのルール説明 ヒット&ブローは、相手が秘密に設定した色や数字の組み合わせを推測するゲームです。日本では主に数字を使った「数当てゲーム」として親しまれていますが、本記事では色を使ったバージョン(マスターマインド)に焦点を当てます。 Nintendo Sw

By Qualiteg 研究部