WSL2でDNS解決がうまくいかない問題と解決方法

WSL2でDNS解決がうまくいかない問題と解決方法

こんにちは!

Windows Subsystem for Linux (WSL2)は、Windows上でLinux環境を利用できる素晴らしい機能ですが、中にはDNS解決に関する問題が発生することがあります。この記事では、その症状と効果的な解決方法を紹介します。

検証環境

この記事で紹介する方法は、以下のバージョンで検証しています

WSL バージョン: 2.4.13.0
カーネル バージョン: 5.15.167.4-1
WSLg バージョン: 1.0.65
MSRDC バージョン: 1.2.5716
Direct3D バージョン: 1.611.1-81528511
DXCore バージョン: 10.0.26100.1-240331-1435.ge-release
Windows バージョン: 10.0.22631.3880

症状

以下のようなエラーメッセージが表示される場合、WSL2でのDNS解決に問題が発生している可能性が高いです:

  • コマンドラインから接続時: Could not resolve hostname ...
  • Pythonコードから接続時: [Errno -2] Name or service not known

これらのエラーは、WSL2内でDNSサーバーの設定が正しく行われていないことを示しています。

原因

WSL2は起動時に自動的に /etc/resolv.conf ファイルを生成し、Windows側のDNS設定を使用しようとします。しかし、この自動生成されるDNS設定が正しく機能しないケースがあります。上記のバージョン情報にあるように、2025年3月時点の最新WSL2(バージョン2.4.13.0)でもこの問題は完全には解決されていません。

解決方法

以下の3ステップで問題を解決できます

STEP1: WSL2が自動生成するDNS設定を無効化

WSL bashで以下のワンライナーを実行して、resolv.confが自動生成されるのを防ぎます。

注意:既存のwsl.conf があるばあいはvim等で編集してください。

sudo sh -c 'cat > /etc/wsl.conf << EOF
[network]
generateResolvConf = false
EOF'

このコマンドは、WSL2の設定ファイル /etc/wsl.conf を作成し、DNS設定の自動生成を無効にします。

STEP2: Windows側でWSLを再起動

Windows PowerShellまたはコマンドプロンプトで以下のコマンドを実行し、WSLを完全に再起動します

wsl --shutdown

STEP3: DNSサーバーを手動で設定

WSLを再度起動し、シェルで以下のコマンドを実行して、GoogleのパブリックDNSサーバーを手動で設定します

sudo sh -c 'cat > /etc/resolv.conf << EOF
nameserver 8.8.8.8
EOF'

これにより、GoogleのDNSサーバー(8.8.8.8と8.8.4.4)を使用するように設定されます。

確認方法

設定が正しく適用されたかを確認するには、以下のコマンドを実行してみてください

ping google.com

または、以下のPythonコードでの接続テスト

import socket
socket.gethostbyname('google.com')

WSLのカーネルバージョンを確認するには、以下のコマンドが使用できます

# カーネルバージョンの簡易表示
uname -r

# カーネルバージョンの詳細表示
cat /proc/version

# システム情報全体の確認(systemdが利用可能な場合)
hostnamectl

また、WindowsコマンドプロンプトまたはPowerShellからWSLのバージョン情報を確認するには

wsl --version

これらが正常に動作すれば、DNS解決の問題は解決されています。

注意点

  • この設定はWSLを再起動するたびにリセットされる可能性があります。その場合は、STEP3を再度実行する必要があります。
  • WSLのバージョンによっては動作が異なる場合があります。最新の情報については、Microsoftの公式ドキュメントを参照することをお勧めします。

まとめ

WSL2でのDNS解決問題は、自動生成されるDNS設定を無効化し、手動でDNSサーバーを設定することで解決できます。この方法は、最新のWSL2バージョンでも有効です。

Read more

シェルスクリプトからcondaコマンドを活用したいとき

シェルスクリプトからcondaコマンドを活用したいとき

こんにちは! 今日はみんな大好きcondaコマンドについてです。 condaコマンドで仮想環境に入って、何らかの処理をして、戻ってくる ようなシェルスクリプト、バッチタスクをやるときのTipsです。 AI開発において、Anacondaとその中核であるcondaパッケージマネージャーはとっても重宝します。 しかし、シェルスクリプトから自動的にcondaを利用しようとすると、意外なハードルがあります。 本記事では、シェルスクリプトからcondaコマンドを正しく呼び出す方法について解説します。 condaと非対話モードの課題 AnacondaがインストールされているLinux環境において、condaコマンドは通常、.bashrcや.bash_profileなどの設定ファイルによって初期化されます。 なんとなくシェルをつかっていると、このcondaコマンドの初期化を忘れてしまいますが、これらの設定は多くの場合シェルの「対話モード」でのみ有効になるように設計されています。 ゆえにシェルスクリプトのような非対話モードでは、condaコマンドが正しく機能してくれません 例えば、.b

By Qualiteg プロダクト開発部
Node.jsで大容量ファイルを扱う:AIモデルのような大きなデータ保存はストリーム処理使いましょう

Node.jsで大容量ファイルを扱う:AIモデルのような大きなデータ保存はストリーム処理使いましょう

こんにちは!今日はAIシステムのフロントサーバーとしてもよく使用するNode.jsについてのお話です。 AIモデルの普及に伴い、大容量のデータファイルを扱う機会が急増しています。LLMなどのモデルファイルやトレーニングデータセットは数GB、場合によっては数十、数百GBにも達することがあります。 一方、Node.jsはWebアプリケーションのフロントサーバーとして広く採用されており、データマネジメントやPythonで書かれたAIバックエンドとの橋渡し役としてもかなりお役立ちな存在です。 本記事では、Node.js v20LTSで5GB程度のファイルを処理しようとして遭遇した問題と、その解決方法について解説します。 Node.jsのバッファサイズ制限の変遷 Node.jsのバッファサイズ制限は、バージョンによって大きく変化してきました Node.jsバージョン サポート終了日 バッファサイズ上限 備考 Node.js 0.12.x 2016年12月31日 ~1GB 初期のバッファサイズ制限(smalloc.kMaxLength使用) Node.js 4.

By Qualiteg プロダクト開発部
AGI時代に向けたプログラマーの未来:役割変化とキャリア戦略

AGI時代に向けたプログラマーの未来:役割変化とキャリア戦略

はじめに 私がはじめてコードを書いたのは1989年です。 当時NECのPC88というパソコンを中古でかってもらい N-88 Basic というBASIC言語のコードをみようみまねで書いて動かしたあの日から何年経つのでしょうか。 当時、電波新聞社のマイコンBASICマガジンという雑誌があり、ベーマガにはいろんなパソコン向けのプログラムコードが掲載されていました。 そんなわけでもう35年以上趣味や仕事でプログラミングに従事していますが、開発環境、情報流通の仕組みには革命といっていいほどの変化、進化がおこりました。 しかしながら、そんな中でも、あくまでコードを書くのは「私」という生身の人間でした。 そうしたある種の古き良き時代は、いよいよ本格的に終わりを告げようとしています。 2023年ごろからのLLM技術の飛躍的進歩により、プログラミング業界は大きな転換期を迎えています。 特に、OpenAI o3,o1やClaude 3.5、Gemini2.0などの大規模言語モデル(LLM)の進化や、その先にある将来的な汎用人工知能(AGI)の出現は、プログラマーやAIエンジニアの役割に根

By Tomonori Misawa / CEO
PythonとWSL開発のトラブルシューティング: PyCharmとCondaの環境不一致問題

PythonとWSL開発のトラブルシューティング: PyCharmとCondaの環境不一致問題

こんにちは! 今回は、WSL上のConda環境をPyCharmから利用する際に発生した「同じ環境なのにパッケージリストが一致しない」という問題に遭遇したため、その原因と対策について書いてみたいとおもいます 問題の状況 開発の流れは以下のようなものでした 1. WSL環境でConda仮想環境を作成 2. その環境をPyCharmのプロジェクトインタプリタとして設定 3. 開発を進める中で奇妙な現象に気づく 具体的には、次のような不一致が発生していました * PyCharmのプロジェクト設定で表示されるpipパッケージのリスト * WSLでConda環境をアクティベートした後にpip listコマンドで表示されるパッケージのリスト これらが一致せず、「WSL側のシェルから直接インストールしたパッケージがPyCharmで認識されない」という問題が生じていました。 この手の問題でよくある原因は、PyCharm側がWSL側の更新を得るのに少し時間がかかったり、 Indexing が遅れているなどなのですが、今回はそれが原因ではありませんでした。 危険な「静かな

By Qualiteg プロダクト開発部