その処理、GPUじゃなくて勝手にCPUで実行されてるかも ~ONNX RuntimeのcuDNN 警告と対策~

その処理、GPUじゃなくて勝手にCPUで実行されてるかも  ~ONNX RuntimeのcuDNN 警告と対策~

こんにちは!

本日は、ONNX RuntimeでGPU推論時の「libcudnn.so.9: cannot open shared object file」エラーの解決方法についての内容となります。

ONNX Runtimeを使用してGPU推論を行う際、CUDAプロバイダの初期化エラーに遭遇することがありますので、このエラーの原因と解決方法を解説いたします。

エラーメッセージの詳細

[E:onnxruntime:Default, provider_bridge_ort.cc:2195 TryGetProviderInfo_CUDA] 
/onnxruntime_src/onnxruntime/core/session/provider_bridge_ort.cc:1778 
onnxruntime::Provider& onnxruntime::ProviderLibrary::Get() [ONNXRuntimeError] : 1 : FAIL : 
Failed to load library libonnxruntime_providers_cuda.so with error: 
libcudnn.so.9: cannot open shared object file: No such file or directory

エラーの原因

このエラーは以下の状況で発生します

  1. cuDNN 9が未インストール: ONNX RuntimeがCUDA 12系で動作する際に必要なcuDNN 9(libcudnn.so.9)がシステムに存在しない
  2. ライブラリパスの問題: cuDNNはインストールされているが、ONNX Runtimeから見つけられない

これはたいていWarningとしてログに出ますがほっとくとGPU推論が実行できず、CPUフォールバックまたは処理の失敗が発生します。

よくあるのがログを無視してると処理がCPUフォールバックしてることにもきづかづ異様に処理が遅くなってしまいます

「あれ~、何かこの処理遅いぞ」

とおもったら、勝手にCPUで実行されていた、っていうことがよくあります

問題の診断方法

1. システムレベルでのcuDNN確認

まずシステムレベルで cuDNNの確認をしてみましょう

# 共有ライブラリとして登録されているか確認
ldconfig -p | grep libcudnn

# 物理ファイルの存在確認
ls -l /usr/lib/x86_64-linux-gnu/libcudnn.so* 2>/dev/null

この出力が何もない場合、cuDNNがシステムに存在しないか、パスが通っていない、ということになります

2. パッケージマネージャーでの確認

次は、パッケージマネージャで確認してみましょう

APT(Ubuntu/Debian)の場合

dpkg -l | grep libcudnn

Conda環境の場合

conda activate your_environment
conda list cudnn

こちらも、何も出ない場合、cuDNNが存在しないことになります。

解決手順

方法1: Conda環境での解決(推奨)

さて、Conda環境を使用している場合、
環境内にcuDNNをインストールすることで解決できます。

# 1. Conda環境をアクティベート
conda activate your_environment

# 2. cuDNN 9.10.1.4をインストール
conda install -c conda-forge cudnn=9.10.1.4 -y

インストールされる主要パッケージ

  • cuda-nvrtc-12.9.86
  • cudnn-9.10.1.4
  • libcublas-12.9.1.4
  • libcudnn-9.10.1.4
  • libcudnn-dev-9.10.1.4

方法2: システムレベルでの解決

一方で、システム全体で使用するようにすることも可能です(Linux環境やWSL環境)

# Ubuntu/Debianの場合
sudo apt update
sudo apt install libcudnn9 libcudnn9-dev

# ライブラリパスの更新
sudo ldconfig

重要: ONNX Runtimeの再インストール

方法1か方法2でcuDNNをインストールできたら、再度onnxruntime-gpuをインストールしましょう。

cuDNNインストール後、ONNX Runtimeが新しい環境を正しく認識するよう、再インストールを行います

# 既存のパッケージをアンインストール
pip uninstall onnxruntime onnxruntime-gpu -y

# GPU版を再インストール
pip install onnxruntime-gpu

この再インストールにより、ONNX Runtimeが新しくインストールされたcuDNNライブラリを正しく検出し、リンクすることができます。

動作確認

以下のPythonスクリプトで、問題が解決したか確認できます

import onnxruntime as ort

# 利用可能なプロバイダを表示
providers = ort.get_available_providers()
print("Available providers:", providers)

# CUDAプロバイダの確認
if 'CUDAExecutionProvider' in providers:
    print("GPU推論が利用可能です")
    
    # テスト用の簡単なモデルでセッション作成を確認
    import numpy as np
    from onnxruntime import InferenceSession
    
    try:
        # セッション作成(実際のモデルパスに置き換えてください)
        session_options = ort.SessionOptions()
        providers_list = ['CUDAExecutionProvider', 'CPUExecutionProvider']
        print("CUDAExecutionProviderが正常に初期化されました")
    except Exception as e:
        print(f"初期化エラー: {e}")
else:
    print("CUDAプロバイダが利用できません")

トラブルシューティング

それでも解決しない場合

たいてい上記で解決しますが、それでも解決しないときは、以下を試します

  1. バージョン互換性の確認
    CUDAとcuDNNは以下の用な関係になっています。まずバージョン互換性を確認しましょう
    • CUDA 12.x → cuDNN 9.x
    • CUDA 11.x → cuDNN 8.x
    • ONNX Runtime GPUのバージョンがCUDAバージョンと互換性があるか確認

詳細なデバッグ情報の取得

import onnxruntime as ort
ort.set_default_logger_severity(0)  # 詳細ログを有効化

環境変数の設定
環境変数を設定すると解決することがあります

export LD_LIBRARY_PATH=$CONDA_PREFIX/lib:$LD_LIBRARY_PATH

CUDAバージョンの確認

nvidia-smi
nvcc --version

まとめ

ONNX RuntimeのCUDAプロバイダエラーは、主にcuDNNライブラリの不在が原因です。

Conda環境を使用している場合は、環境内にcuDNNをインストールします、
さらに、その後念には念を入れONNX Runtimeを再インストールしましょう。

これでたいていは解決するとおもいます

Read more

ASCII STARTUP TechDay 2025に出展します!

ASCII STARTUP TechDay 2025に出展します!

株式会社Qualitegは、2025年11月17日(月)に東京・浅草橋ヒューリックホール&カンファレンスで開催される「ASCII STARTUP TechDay 2025」に出展いたします。 イベント概要 「ASCII STARTUP TechDay 2025」は、日本のディープテックエコシステムを次のレベルへ押し上げ、新産業を創出するイノベーションカンファレンスです。ディープテック・スタートアップの成長を支えるエコシステムの構築、そして成長・発展を目的に、学術、産業、行政の垣根を越えて知を結集する場として開催されます。 開催情報 * 日時:2025年11月17日(月)13:00~18:00 * 会場:東京・浅草橋ヒューリックホール&カンファレンス * 住所:〒111-0053 東京都台東区浅草橋1-22-16ヒューリック浅草橋ビル * アクセス:JR総武線「浅草橋駅(西口)」より徒歩1分 出展内容 当社ブースでは、以下の3つの主要サービスをご紹介いたします。 1.

By Qualiteg ニュース
大企業のAIセキュリティを支える基盤技術 - 今こそ理解するActive Directory 第4回 プロキシサーバーと統合Windows認証

大企業のAIセキュリティを支える基盤技術 - 今こそ理解するActive Directory 第4回 プロキシサーバーと統合Windows認証

11月に入り、朝晩の冷え込みが本格的になってきましたね。オフィスでも暖房を入れ始めた方も多いのではないでしょうか。 温かいコーヒーを片手に、シリーズ第4回「プロキシサーバーと統合Windows認証」をお届けします。 さて、前回(第3回)は、クライアントPCやサーバーをドメインに参加させる際の「信頼関係」の確立について深掘りしました。コンピューターアカウントが120文字のパスワードで自動認証される仕組みを理解いただけたことで、今回のプロキシサーバーの話もスムーズに入っていけるはずです。 ChatGPTやClaudeへのアクセスを監視する中間プロキシを構築する際、最も重要なのが「確実なユーザー特定」です。せっかくHTTPS通信をインターセプトして入出力内容を記録できても、アクセス元が「tanaka_t」なのか「yamada_h」なのかが分からなければ、監査ログとしての価値は半減してしまいます。 今回は、プロキシサーバー自体をドメインメンバーとして動作させることで、Kerberosチケットの検証を可能にし、透過的なユーザー認証を実現する方法を詳しく解説します。Windows版Squid

By Qualiteg AIセキュリティチーム
エンジニアリングは「趣味」になってしまうのか

エンジニアリングは「趣味」になってしまうのか

こんにちは! 本日は vibe coding(バイブコーディング、つまりAIが自動的にソフトウェアを作ってくれる)と私たちエンジニアの将来について論じてみたいとおもいます。 ちなみに、自分で作るべきか、vibe codingでAIまかせにすべきか、といった二元論的な結論は出せていません。 悩みながらいったりきたり考えてる思考過程をツラツラと書かせていただきました。 「作る喜び」の変質 まずvibe codingという言葉についてです。 2025年2月、Andrej Karpathy氏(OpenAI創設メンバー)が「vibe coding」という言葉を広めました。 彼は自身のX(旧Twitter)投稿で、 「完全にバイブに身を任せ、コードの存在すら忘れる」 と表現しています。 つまり、LLMを相棒に自然言語でコードを生成させる、そんな新しい開発スタイルを指します。 確かにその生産性は圧倒的です。Y Combinatorの2025年冬バッチでは、同社の発表によれば参加スタートアップの約25%がコードの95%をAIで生成していたとされています(TechCrunch, 2

By Qualiteg プロダクト開発部
発話音声からリアルなリップシンクを生成する技術 第5回(後編):Transformerの実装と実践的な技術選択

発話音声からリアルなリップシンクを生成する技術 第5回(後編):Transformerの実装と実践的な技術選択

なぜGPTで成功したTransformerが、リップシンクでは簡単に使えないのか?データ量・計算量・過学習という3つの課題を深掘りし、LSTMとTransformerの実践的な使い分け方を解説。さらに転移学習という第三の選択肢まで、CEATEC 2025で見せた「アバター」の舞台裏を、クオ先生とマナブ君の対話でわかりやすく紐解きます。

By Qualiteg プロダクト開発部